1. はじめに
2024年秋、生成AIの普及が進む中、その実態はどうなっているのでしょうか。GMOリサーチ&AI株式会社が実施した最新の調査結果を基に、生成AIの認知度、利用状況、そして企業での活用実態について詳しく見ていきましょう。この調査は、15歳以上の男女1,103名を対象に、2024年8月19日から20日にかけて実施されました。
2. 生成AIの認知度と利用状況
2.1 認知度の推移
- 2024年8月時点で70.2%
- 2024年5月の72.1%から若干低下
- 2024年2月の71.1%とほぼ横ばい
- 約7割の人が生成AIを知っているという高い認知度が続いている
2.2 利用率の変化
- 2024年8月時点で38.4%
- 2024年5月の33.7%から4.7ポイント増加
- 2024年2月から5月にかけては、わずか0.2ポイントの増加だったことと比較すると、近月で大きく伸びている
- 「日常的に使っている」「ときどき使っている」「ほぼ使わない」を含む
2.3 認知と利用のギャップ
- 認知度70%に対し、利用率は40%未満
- 認知されていても、実際の利用には至っていない層が多い
- このギャップは、今後の成長の余地を示唆している
3. 生成AIの主な利用目的
3.1 業務効率化と文書作成
- 最も多い利用目的
- 2024年2月の34.7%から8月には46.8%へ大幅増加(12.1ポイント上昇)
- 企業での実用的な活用が進んでいることを示唆
3.2 テキストの自動校正や要約作成
- 2番目に多い利用目的
- 文書作成の補助ツールとして定着
- 具体的な数値は示されていないが、安定した需要があると推測される
3.3 専門的な知識の調査と確認
- 3番目に多い利用目的
- 2024年2月の25.1%から8月には32.8%へ増加(7.7ポイント上昇)
- 活用の幅が広がっていることを示唆
- 専門分野での情報収集ツールとしての価値が認識されつつある
4. 生成AIの業務への影響
4.1 業務効率の向上
- 43.6%が「業務効率が大幅に向上した」と回答
- 単純作業や反復的なタスクの自動化・迅速化に貢献
- 時間節約や生産性向上につながっている可能性が高い
4.2 タスクの品質向上
- 38.5%が「特定のタスクの品質が向上した」と回答
- プロセスの正確性や一貫性の改善に寄与
- 人為的ミスの減少や標準化の促進が期待される
4.3 その他の影響
- 具体的な数値は示されていないが、創造性の向上や意思決定支援なども考えられる
- 一方で、従来の業務プロセスの再構築が必要になる可能性もある
5. 生成AI利用拡大における課題
5.1 スキル不足
- 最大の課題として38.5%が回答
- 社員教育や人材育成の必要性を示唆
- AIリテラシーの向上が急務であることを示している
5.2 技術的な制約
- 2番目に大きな課題
- システム統合や既存インフラとの互換性などが障壁に
- セキュリティやデータプライバシーの問題も含まれる可能性がある
5.3 予算の制約
- 3番目に大きな課題
- 導入・運用コストが普及の妨げになっている可能性
- 初期投資やランニングコストの高さが中小企業の導入を躊躇させている可能性がある
5.4 その他の課題
- 法的・倫理的な問題への対応
- 社内での受け入れ態勢の整備
- AIの出力に対する信頼性の確保
6. 今後の展望
6.1 利用率の更なる向上
- 認知度と利用率のギャップを埋める余地がある
- 教育や啓蒙活動の重要性
- ユーザーフレンドリーなインターフェースの開発が鍵となる可能性
6.2 活用分野の拡大
- 専門知識の調査など、新たな用途の開拓
- より多様な業種・職種での応用が期待される
- 医療、法律、金融など専門性の高い分野での活用の可能性
6.3 課題解決への取り組み
- スキル向上のための教育プログラムの充実
- 技術的制約を克服するためのソリューション開発
- コスト対効果を高める運用方法の模索
- 産学連携による研究開発の推進
6.4 AIと人間の協働
- AIの強みと人間の強みを組み合わせた新しい業務スタイルの確立
- 創造性や感情面でのタスクにおける人間の役割の再定義
7. まとめ
生成AIは着実に企業の業務プロセスに浸透しつつあります。効率化や品質向上といった具体的な成果が見え始めている一方で、人材育成や技術的・予算的な課題も明らかになっています。今後、これらの課題を克服しながら、生成AIの更なる普及と発展が期待されます。
特筆すべきは、業務効率化と文書作成における利用が大幅に増加していることです。これは、企業が生成AIを実用的なツールとして認識し始めていることを示しています。また、専門的な知識の調査と確認への活用が増えていることから、AIの役割が単純作業の代替から、より高度な知的支援へと拡大していることがうかがえます。
一方で、スキル不足や技術的制約、予算の問題など、導入や活用を妨げる要因も明確になっています。これらの課題に対しては、継続的な教育投資や、より使いやすいAIツールの開発、コスト効率の高い導入方法の模索などが必要となるでしょう。
この調査結果は、生成AIの現在地を明確に示すとともに、今後の方向性についても重要な示唆を与えています。テクノロジーの進化と人材育成のバランスを取りながら、生成AIを有効活用していくことが、これからの企業の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。企業は、自社の特性や需要に合わせて、戦略的に生成AIを導入し、その可能性を最大限に引き出していく必要があります。
コメント